ストレスとは?その原因と付き合い方、そして工学との意外な関係も



この記事について
現代社会に生きる私たちにとって、ストレスは切っても切れない存在です。
だからこそ、ストレスと上手に付き合っていく方法を知ることは大切ですよね。
今回のコラムでは、ストレスの正体や私たちの心身への影響、ストレスの上手な対処法までを詳しく解説します。
ストレス社会と呼ばれる現代を健やかに生きるために、まずはストレスについての正しい知識を身につけていきましょう。
このコラムは、私が監修しました!
講師池田 圭吾Ikeda Keigo制御工学
私の専門は機械工学です。機械工学は、時代の変化に合わせて進化しながら、常に人類の暮らしを支えてきた「最強の味方」だと考えています。
その歴史は非常に古く、人類が石器を作った瞬間から、すでに機械工学の芽は生まれていました。古代エジプトでは「てこ」や「滑車」、「ベアリング」のような技術が活用され、中世には風車や時計といった自動機構が登場。そして産業革命を経て、蒸気機関やエンジンが誕生し、機械は一気に加速的な進化を遂げました。今では飛行機が空を飛び、船が海を渡り、新幹線や自動車が世界中の人々をつないでいます。
一見、歴史とは無縁に思われがちですが、機械工学はまさに「歴史を積み重ねてきた学問」です。長い歴史の中で培われた知恵や技術を学び、それを現代風にアレンジして未来へとつなげるそんな面白さがここにはあります。
そして、現在はAI(人工知能)の誕生により、機械が自ら考え、動き、進化する時代。そんな未来を切り拓く最前線に立てるのが、機械工学のエンジニアです。これからの時代、機械工学はもっともっと面白くなるに違いありません。
私の研究室「生体?機械システム研究室」では、人の心理と機械の融合をテーマに研究を行っています。
「人の心理とは何か?」一筋縄ではいかない難しいテーマですが、だからこそ、そこには大きなロマンがあります。
たとえば、言葉の通じない赤ちゃんと会話をしたいと思ったことはありませんか?
表情や仕草、心拍や呼吸といった生体情報を通して、その気持ちに寄り添うことができたなら。そんな未来を、機械工学の力で実現したいと考えています。
目次
ストレスとは?
ストレスとは、外部からの刺激に対して体が示す反応のことです。
「ストレス」という言葉はもともと、物理学で「外部の圧力が物体に歪みを生じさせる現象」を表すものとして使われていました。
これが転じて、現代では人間の心身の状態を表現する言葉として使われるようになっています。
原因となる外的刺激「ストレッサー」と、それによって引き起こされる心身の反応「ストレス反応」の2つを総称して「ストレス」と呼ぶのが一般的です。
ストレッサーとストレス反応の関係は、風船で例えられることが多いです。
例えば、風船に空気を入れて指で押したとき、押した力に応じて風船は変形します。
このときの風船を押す力がストレッサーで、押されて変形することが「ストレス反応」です。
同じような力で押しても、風船の状態や硬さ、受け止める力が違えば、変形は異なります。
ストレスも同じように、同じようなストレッサーに対しても状況や耐性などによって異なるストレス反応が現れることもあります。
ストレスの原因を知ろう
ストレスを引き起こす原因「ストレッサー」は、大きく以下の4つに分けられます。
ストレッサーを知ることは、ストレス対策を考える上で重要な第一歩です。
①物理的ストレッサー
気温や湿度、騒音、混雑など、環境的な要因がこれに該当します。
例えば、真夏の暑さやエアコンの効きすぎた室内環境、工事や鉄道などから発生する騒音や振動などが挙げられます。
②化学的ストレッサー
薬物や有害物質、食品添加物など、化学物質に関連する刺激です。
例えば、空気中の汚染物質や過剰なアルコール摂取、タバコのにおい、香料の強い香りなどがストレッサーとなります。
③身体的?生物的ストレッサー
睡眠不足や病気、過労、ケガ、空腹など身体的な負担が該当します。
花粉やウイルス、妊娠?月経といった生物的な要因もここに含まれます。
④精神的?社会的ストレッサー
人間関係や環境、経済的な問題、将来への不安など、心理的?社会的な要因が該当します。
特に現代社会では精神的?社会的ストレッサーが多く見られます。
ストレスが原因の一つとなる病気には何がある?
過剰なストレスが長期間続くと、心身にさまざまな悪影響が現れ、それが病気の原因となってしまうこともあります。
ストレスを原因の一つとして、心身に現れやすい症状や疾患にはこんなものがあります。
- 胃?十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群
- 高血圧
- 気管支喘息
- 頭痛
- 肩こり
- めまい、低血圧、自律神経失調症
- 食欲不振、食欲過剰
- 不安感
- パニック発作
- アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん) など
ストレスと関連があると報告される病気はたくさんあります。
過度に心配する必要はありませんが、「たかがストレス」と思わず、上手に対処していくことが大切です。
ストレスを上手に対処するために

ストレスを避けることは難しいものですが、上手に付き合うことでその影響を軽減することが可能です。
効果的なストレス対処法をご紹介します。
十分な休養を取る
睡眠、入浴、休息を取り、しっかりと体を休めましょう。
睡眠不足や疲労の蓄積はストレス耐性を低下させるため、質の良い睡眠を心がけることが重要です。
ゆったりと湯船に浸かることでリラックス効果も得られます。
物事の考え方を変える
ストレスを感じる際の自分の思考パターンを認識してみましょう。
ついネガティブに考えてしまう自分の思考パターンを「また悪いクセが出ている。本当はそこまで深刻なことではない」と俯瞰し、ものの見方を変えることでストレスが軽減する可能性もあります。
例えば「授業中に発言を求められること」をストレスと感じているとしましょう。
では、あなたは、ほかの人が発言した内容をしっかり覚えていますか?
よくよく考えてみると、ほかの人が話したことは、そんなに印象に残っていないものです。
それは周りの人にとっても同じ。
自分中心の物事の考え方を少し変えてみることで、心が軽くなることは多いですよ。
ストレスを忘れられる楽しみを見つける
運動、読書、音楽鑑賞、友人とのおしゃべりなど、自分が楽しいと感じる活動を定期的に行うことで、ストレスを効果的に解消しましょう。
映画?ドラマやお笑い番組を観るなど、泣いたり笑ったりと感情が刺激される活動は、感情をリセットでき、ストレスが解消しやすくなるともいわれていますよ。
周りの人に相談する
誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
話すことで気持ちが整理され、新しい視点や解決策が見つかることも。
一人で抱え込まず、家族や友人、専門家に相談しましょう。
学校なら、先生に相談するのも良いでしょう。
担任の先生に相談しにくいなら、保健室の先生に相談するのもおすすめです。
自治体によりますが、スクールカウンセラーが派遣?配置されている学校もあります。
つらい症状が続く場合は、必要に応じて医療機関の受診も検討してください。
工学の力でストレスをプラスに!日常の"良いストレス"の秘密

意外に思われるかもしれませんが、ストレスと工学には大きな関わりがあります。
まずは、工学について簡単に説明します。
工学とは、人々が快適に暮らせるようにするために、日々製品を開発したり、研究を行ったりする分野です。
ここで重要なのは、「人々の暮らしを豊かにする」、つまり「人々のストレスを低減する」ようなことを目指しているという点です。
そこで本稿では、工学的観点からストレスをどのように捉えているのか、また人々の生活をどのように向上させているのかについて説明します。
工学では、主に物理的ストレス(例:電車や車の振動など)を低減することを目的として、製品の開発が行われています。
一般的に、物理的ストレスは小さい方が良いとされています。
しかしながら、人にとってまったくストレスがない環境というのは、かえって不快感を増大させることがあります。
考えてみてください。
目隠しをして、音や光を完全に遮断した状態では、強い恐怖心が芽生えると思います。
これは、私たち人間を含む動物は、ある程度のストレス刺激を受けることで安心や覚醒を得る生き物だからです。
そのため、ここでは物理的ストレスが、工学の力によって「良いストレス」として働くメカニズムについて説明します。
映画館で動く座席について
皆さんは、「4D映画」というものをご存じでしょうか?
これは、普通の映画にくわえて、座席が前後や左右に動いたり、水しぶきや風などの演出が加わることで、まるで映画の中に自分が入りこんだような体験ができる映画です。
例えば、車の衝突シーンや空を飛ぶシーンでは、座席がガタンと動いたり揺れたりします。そのことで、より迫力を感じたり、臨場感が高まり、ワクワクした気持ちになります。
このような動く座席は、コンピュータやモーターの仕組みによって制御されており、映画の場面に合わせて最適な動きをするように工夫されています。
つまり、「適度な揺れ=心地よいストレス」があることで、映画をより楽しめるようになっているのです。
遊園地のアトラクションについて
遊園地にあるジェットコースターやフリーフォールなどのアトラクションに乗ったことがある方もいらっしゃるかと思います。
とても速く、風を感じたり、体がふわっと浮くような感覚があったりして、「少し怖いけれど楽しい」と感じることが多いのではないでしょうか。
これは、身体に一時的な驚きや刺激、つまり「物理的なストレス」が加わることで、スリルを感じ、それが楽しい体験へと変わっていくためです。
こうした乗り物は、工学的にしっかりと安全性を確保した上で、「ちょうどよいストレス」を与えるように設計されています。
つまり、ただ怖いだけでなく、「楽しさ」を引き出すための工夫がなされているのです。
自然のリズム「1/fゆらぎ」について
川の流れる音や木の葉が風にゆれる音、ろうそくの炎のゆらぎなどを見たり聞いたりすると、なんとなく心が落ち着いたり、安心した気持ちになったご経験はないでしょうか?
このように、ずっと同じリズムではなく、ちょっとずつ変化しながら続くリズムのことを、「1/f(いちぶんのえふ)ゆらぎ」と呼びます。
このゆらぎは、人の心や体にとって心地よく、リラックス効果や癒やしの効果があるといわれています。
たとえば、電車の揺れもこの「1/fゆらぎ」の一例です。
電車に乗っていると、ガタンゴトンという音やゆったりした揺れが続きますが、それがずっと同じではなく、少しずつ変化しながら続くことで、心地よく感じられます。
実際に、多くの方が「電車に乗っていると眠くなる」とおっしゃいますが、それはこの「1/fゆらぎ」によってリラックス状態になっているからだと考えられています。
電車の揺れは、線路の状態やカーブ、速度の変化などに応じて自然に生まれる微妙な変化があり、それが「ちょうどよいストレス」となって、人に安心感や心地よさを与えているのです。
このように、自然界だけでなく、身近な乗り物や生活の中にも1/fゆらぎはたくさん存在し、私たちの心と体に良い影響を与えてくれています。
「ストレス」という言葉を聞くと、つらいものや避けたいものというイメージを持たれるかもしれません。
しかし実際には、心地よく感じられる「よいストレス」も存在し、それによって人は楽しさや安心感を得ることができるのです。
映画館の動く座席、遊園地のアトラクション、そして自然のリズム――これらはすべて、人の心を豊かにし、楽しい気持ちや落ち着きを生み出すように工夫された「ちょうどよいストレス」の例です。
このような工夫を支えているのが、「工学」という分野なのです。
ストレスは外部刺激への心身の防御反応。工学を使った「よいストレス」も上手に活用しよう!
ストレスとは、外的刺激に対して心身が反応する自然な現象です。
適度なストレスは生活の張りや成長の糧になりますが、過度なストレスは心身へ悪影響を及ぼし、病気の原因の一つになってしまうこともあります。
ストレスの原因となる刺激は「ストレッサー」と呼ばれ、物理的ストレッサー、化学的ストレッサー、身体的?生物的ストレッサー、精神的?社会的ストレッサーの4種類に大別されます。
ストレスは現代社会で切っても切れないもの。
物理的ストレッサーを活用した「ちょうどよいストレス」を実現してくれる身近な工学技術など、ストレスの効果的な対処法を知り、実践することで、ストレスと上手に付き合っていきましょう。
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今回のコラムのテーマ「ストレス」と工学はあまり関係しないように思われるかもしれませんが、実は、人間の心理を分析して感情を推定する技術も開発が進められているんです!
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